どのような理由があれ、自ら命を絶つことは決してしてはいけない。
仏教では自殺はこの上ない「罪」として、天上界(一般には「天国」と表現されるが、仏教では「浄土」といい、「極楽」も浄土の一つ)には行けないとされる(つまり「地獄」行きだ)。もちろん、僧侶は葬儀に際し、故人が自殺した場合でも天上界へ行けるように、仏教の教えに従って一心に作法を行いお経を唱えるが、基本的には天上界へは行けないと理解すべきである。自殺をして待っているのは「楽」ではなく「苦」である。自殺をして楽にはならない。
人の命は、自然万物の摂理(因縁)に従ってこの世に授かったものだ。もちろん、両親から生まれたのだが、両親を親として自分が子供として生まれ、本人が、その本人としての人格として生まれたのは、全て、自然万物の摂理(因縁)によるものだ。その自然の摂理に逆らって、自ら命を終わらせてしまうのは大変な「罪」である。このことから、自殺をした場合は、基本的に天上界(天国)へは行けない。
また、自殺は家族や身内・知人に想像を絶する大変な悲しみを与える。その上、自殺をした故人の記憶は、決して良いものにはならない。自分の命は、自分一人のものではない。人生を生きていく上でも、このことを常に念頭において行動しなければならない。死を短絡的に考えてはいけないのである。
世の中には不治の病で余命いくばくもない人も多くいて、そのほとんどが、それでも最後まで命をまっとうしようと強く生きていることを思えば、簡単に命を絶つことを考えてはいけない。
つらいことや悲しいことと共に、楽しいことやうれしいこともあるこれからの人生。それらを経験せずに終わらせてしまうことは、決してしてはいけない。待っているであろうこれからの人生の楽しみや喜びを思い、強く生きていきましょう。
自然の摂理(因縁)により授かった尊い命、大切にしましょう。
東光寺住職
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